ドローン空撮を始める前に知っておきたいこと
撮影許可の取り方・申請が必要な場所を徹底整理

「撮影してみたい」その前に、まず確認すること
近年、AIの急速な進化により、プロのクリエイターが手がけたような高品質なCG映像や編集動画を、誰でも手軽に作れる時代になりました。しかしどれだけ映像表現の技術が進化しても、「実際の空から見た景色」だけは、AIには生み出せません。
ドローンが映し出す映像は、地上からでは絶対に切り取れないダイナミックな視点と臨場感が最大の魅力です。AIが作るCGとは異なる「本物のリアル」を届けられる点で、ドローン空撮への注目はむしろ高まっており、観光地、不動産、イベント、結婚式など、様々なシーンでその需要は広がり続けています。
一方で、ドローンはメディアやプロモーション映像の世界で注目を集めているだけでなく、世界各地の紛争においても軍事目的での活用が急速に広がっています。こうした背景も影響してか、日本国内でもドローンに関する法整備は年々アップデートされており、今後もルールの強化や規制の見直しが続くことが予想されます。
だからこそ、「始める前に正しいルールを把握しておくこと」が、ドローン空撮を長く安全に続けるための大前提です。
ただし、「自分でも飛ばして撮影してみたい」と思ったときに、まず理解しておかなければならないのが法律とルールです。ドローンは「空を飛ぶ機械」である以上、自由に飛ばせる場所は限られており、場所や飛行方法によっては国土交通省への事前申請が必要になります。
申請なしに飛ばした場合、航空法違反となり50万円以下の罰金が科される可能性があります。2023年には、国道上空でのドローン撮影が目視外飛行に該当するとして書類送検された事例も発生しています。
この記事では、ドローン空撮を安全・合法に始めるために知っておくべき、許可の仕組みと申請の流れを整理します。
まず押さえる:ドローン飛行を規制する3つの法律
ドローンの飛行・空撮に関係する法律は航空法だけではありません。場所によって複数の法律が重なって適用されます。
【① 航空法】
100g以上のドローンが対象。飛行禁止空域・飛行方法の制限を定めており、違反すると50万円以下の罰金。空撮で最も頻繁に関係する法律。
【② 小型無人機等飛行禁止法】
重量に関係なく全機体が対象。国会議事堂・首相官邸・自衛隊施設・空港・原子力事業所などの周辺おおむね300mでの飛行を禁止。違反は1年以下の懲役または50万円以下の罰金。
【③ 民法・各種条例等】
私有地の上空は土地所有者の許可が必要(民法)。河川法、道路交通法、都市公園法、各自治体条例なども関係する。
※本記事では主に航空法に基づく許可申請を解説します。実際の飛行前には複数の法律・条例を確認することが必要です。
※申請が不要な場合でも、機体登録・飛行計画の通報・飛行日誌の作成は条件を問わず義務となります(航空法)。
申請が必要かどうか、まず「特定飛行」に該当するか確認する
航空法では、特定の空域や飛行方法を「特定飛行」と定義しており、これに該当する場合は国土交通省への飛行許可・承認申請が必要です。
空撮においては、以下の表に該当する場面が非常に多くなります。自分の撮影がどれに当てはまるか確認しましょう。
▼ 空撮シーン別・申請の要否一覧(航空法)
| 空撮シーン・飛行条件 | 申請の要否 | 補足・注意点 |
|---|---|---|
| 郊外・田園地帯での昼間飛行(人のいない場所) | 申請 不要 | DIDや禁止空域に該当しないこと、高度150m未満であることが条件 |
| 管理者の許可を得た私有地内(農場・施設等) | 申請 不要 | 土地所有者・管理者の許可は別途必要。機体登録・飛行日誌は必須 |
| 屋内・ネット等で完全に囲われた空間 | 申請 不要 | 航空法の対象外。ただし管理者の許可は必要 |
| 市街地・住宅街での空撮(DID上空) | 申請 必要 | 人口集中地区は国勢調査に基づき指定。事前にDIPS2.0で確認を |
| 空港・ヘリポート周辺での撮影 | 申請 必要 | 空港の種類により制限区域が異なる。関西空港周辺も対象 |
| 地上から高さ150m以上での撮影 | 申請 必要 | 山岳・高層建築物付近で該当しやすい。必ず事前確認を |
| 夜間(日没〜日出)の撮影 | 申請 必要 | 夜景・イルミネーション撮影が該当。二等資格でも限定変更が必要 |
| モニターやゴーグルを見ながらの飛行(目視外・FPV) | 申請 必要 | 機体が見えている場合でも映像越しの操縦は目視外に該当 |
| 第三者や建物・車両から30m未満での撮影 | 申請 必要 | 市街地での近接撮影、不動産外壁撮影などで該当しやすい |
| 花火大会・ライブ・スポーツ等のイベント上空 | 申請 必要 | 人が多数集まる催し物はすべて該当。主催者の許可も別途必要 |
| 農薬・肥料の空中散布 | 申請 必要 | 物件投下に該当。農薬取締法に基づく別途資格も必要 |
| 消防・救助活動中の緊急用務空域 | 原則 禁止 | 災害・事故現場付近。指定情報は国交省X(旧Twitter)で随時公表 |
| 国会議事堂・首相官邸・自衛隊施設等の周辺300m | 原則 禁止 | 小型無人機等飛行禁止法の対象。機体の重量に関係なく全機種が対象 |
※「申請不要」の場合でも、機体登録・飛行計画の通報・飛行日誌の作成は必須です。また航空法以外に、河川法・条例・土地所有者への確認が別途必要な場合があります。
✅ 申請が不要になるケースもある
すべての空撮に申請が必要なわけではありません。以下の条件に該当する場合は、航空法上の飛行許可・承認は不要です。ただし、機体登録・飛行計画通報・飛行日誌の作成は条件を問わず義務となります。
※「申請不要」でも機体登録・飛行日誌は必須です
▼ 航空法上の申請が不要となる主な条件
| ✅ 申請不要となる条件 | 内容と注意点 |
|---|---|
| 屋内での飛行 | 体育館・倉庫など四方と天井が壁に囲まれた空間。ただし管理者の許可は必要 |
| ネット等で完全に囲われた屋外空間 | ゴルフ練習場のネット内など。ドローンが飛び出さない構造であること |
| 100g未満の機体(模型航空機) | 航空法の「無人航空機」に該当しない。ただし小型無人機等飛行禁止法は適用される |
| 係留飛行(30m以内の紐で繋留) | 立入管理措置が必要。特定飛行に該当しない場合に限り申請不要 |
⚠️ 要注意:「自分の土地(庭・畑)なら大丈夫」は大きな勘違い
初心者の方が最も誤解しやすいポイントのひとつです。ドローンの飛行規制は「土地の所有権」ではなく「上空の空域」に対してかかります。自分の庭や畑の上であっても、申請が必要になる場合があります。
なぜ自分の土地でも制限されるのか
そもそも「土地を所有する」ことと「その上空を自由に使える」ことは、法律上イコールではありません。民法では「土地の所有権は上下に及ぶ」とされていますが、国の見解では、その範囲は「利益の存する限度」に限定されると明記されています(内閣官房「無人航空機の飛行と土地所有権の関係について」)。
そしてドローンの飛行を規制する航空法は、土地の所有権とは無関係に「上空の空域」に対して適用されます。つまり、どれだけ広い自分の土地であっても、上空の空域ルールには従わなければなりません。
具体的にどんなケースで申請が必要になるか
以下は、自分の土地なのに申請が必要になる代表的なパターンです。
| こんなケース | なぜ申請が必要なのか |
|---|---|
| 住宅地の庭・自宅敷地内(都市部) | 人口集中地区(DID)に該当する場合は自分の土地でも飛行許可が必要。東京・大阪などの市街地はほぼ全域がDID指定されている |
| 自分の農地・畑(郊外でも) | DIDでなくても、農薬散布は「物件投下」に該当し承認申請が必要。機体から30m以内に建物・電柱・電線があれば「物件30m未満」の申請も必要 |
| 自宅や倉庫の外壁・屋根を点検 | 建物(物件)から30m未満の飛行になるため承認申請が必要。自分の建物であっても例外ではない |
| 夜間に自分の敷地で飛ばす | DIDかどうかに関係なく、日没〜日出の飛行は「夜間飛行」として承認申請が必要 |
「申請不要」は条件がそろって初めて成立する
前の表でご紹介した「申請不要」の条件(屋内・係留飛行・100g未満など)は、複数の条件がすべて揃ったときに初めて成立します。「自分の土地だから」という理由だけでは申請不要にはなりません。
飛行前には必ず「DIDに該当するか(国土地理院の地理院地図で確認可能)」「飛行方法が特定飛行に当たらないか」を確認することが大切です。判断に迷ったときは、無理に飛ばさず、国土交通省や登録講習機関に相談しましょう。
国家資格(二等)を持っていると申請が省略できるケースがある
ドローンの国家資格「二等無人航空機操縦士」と、機体に「第二種機体認証」が付いている場合、カテゴリーIIBに分類される飛行(DID上空・夜間・目視外・第三者30m未満など)では、立入管理措置(第三者が立ち入らないようにする安全確保)を行うことで飛行許可・承認申請が不要になります。
つまり、国家資格と機体認証の組み合わせが揃えば、毎回の申請なしに様々な空撮シーンに対応できるようになります。これが、空撮を仕事にする上で国家資格が重要な理由のひとつです。
▼ 国家資格の有無で変わる手続きの違い
| 飛行カテゴリ | 国家資格なし | 二等資格あり(第二種機体認証) |
|---|---|---|
| DID上空・夜間・目視外など(カテゴリーIIB) | 飛行許可・承認申請が必要 | 立入管理措置のみで申請不要(※夜間・目視外は限定変更も必要) |
| 有人地帯・目視外(カテゴリーIII・レベル4) | 不可 | 一等資格+第一種機体認証が必要 |
| 空港周辺・150m以上 | 許可申請が必要 | 引き続き許可申請が必要 |
※第二種機体認証はメーカーまたは国土交通省が認定した機体に付与されます。お手持ちの機体が認証を受けているかはDJI等のメーカーサイトまたはDIPS2.0でご確認ください。
※夜間飛行・目視外飛行をカテゴリーIIBとして実施する場合は、二等資格に加えて「限定変更」の取得が別途必要です(国土交通省 航空法施行規則に基づく)。
撮影場所別・確認先チェックリスト
航空法の許可が取れても、それだけで「どこでも飛ばせる」わけではありません。場所によってはさらに別の許可・確認が必要です。撮影前に以下を確認しましょう。
| 撮影場所・状況 | 申請・確認先 | 備考 |
|---|---|---|
| 一般的な市街地(DID) | 国土交通省(DIPS2.0) | 航空法の飛行許可申請 |
| 河川・河川敷 | 河川管理者(国交省・都道府県) | 河川法に基づく占用許可 |
| 公園(国立・都立等) | 公園管理者 | 多くの公園でドローン禁止条例あり |
| 道路上空・離発着 | 管轄警察署 | 道路使用許可が必要 |
| 海岸・砂浜 | 海岸管理者 | 海岸法に基づく確認 |
| 港湾・港 | 港湾管理者・海上保安庁 | 港則法・海岸法 |
| 私有地(他人の土地) | 土地所有者・管理者 | 民法上の権利侵害に注意 |
| イベント・催し物会場 | 国土交通省+会場管理者 | 承認申請+主催者許可が必要 |
| 国の重要施設周辺300m | 原則禁止(例外あり) | 小型無人機等飛行禁止法 |
※公園は管理主体によってルールが大きく異なります。大阪市内の公園は大阪市に、国定公園は環境省・都道府県にそれぞれ確認が必要です。
飛行許可・承認申請の基本的な流れ
申請が必要と判断したら、以下の手順で進めます。申請は国土交通省のオンラインシステム「DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)」から行うのが原則です。
100g以上の機体はDIPS2.0での機体登録が必須。登録記号を機体に表示していること。未登録の場合は先に登録手続きを。(詳細は当サイトの「機体登録制度」コラム参照)
カテゴリーI(申請不要)・II(条件により必要)・III(最も制限が厳しい)のいずれに該当するかを国交省のフローチャートで確認する。
https://dips2.mlit.go.jp/ にアクセスし、アカウントを作成。機体情報・操縦者情報を登録する。
飛行日時・場所・目的・飛行方法などを入力。飛行マニュアルも添付する(航空局標準マニュアルまたは独自マニュアル)。
審査には通常10開庁日以上かかる。不備があれば補正を求められる。余裕をもって3〜4週間前には申請を。
【包括申請という選択肢】
業務で継続的に空撮を行う場合は「包括申請」が便利です。日本全国・1年間を有効期間として申請するもので、飛行のたびに申請する手間が省けます。ただし、イベント上空・空港周辺・150m以上の高度・趣味目的・研究開発目的の飛行は包括申請の対象外で個別申請が必要です(国交省 航空局標準マニュアル02の対象外飛行より)。包括申請の詳しい手順は次回のコラムで解説します。
まとめ:空撮は「飛ばす前の準備」が9割
ドローン空撮を安全・合法に行うために、この記事でお伝えしたポイントを整理します。
- ドローン飛行は航空法・小型無人機等飛行禁止法・民法など複数の法律が関係する
- 「特定飛行」に該当するかどうかで、国土交通省への申請の要否が決まる
- 市街地・夜間・FPV(目視外)・イベント上空などは申請が必要なケースが多い
- 国家資格(二等)+第二種機体認証があれば、カテゴリーIIBの飛行は申請不要になる
- 航空法の許可以外に、場所ごとに河川・公園・道路・私有地の管理者への確認も必要
- 申請はDIPS2.0から行い、飛行開始の3〜4週間前には提出しておくのが安心
「どこで飛ばしていいか分からない」「申請が難しくて一歩踏み出せない」という方は、まずスクールの無料体験会でご相談ください。飛行ルールの基礎から丁寧にご説明します。
次回コラム予告:包括申請(DIPS2.0)の実務手順を徹底解説
申請の具体的な操作方法・飛行マニュアルの作り方・よくある不備ポイントまで、実務に使えるDIPS2.0の使い方を次回のコラムで詳しく解説します。
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